感冒(かぜ)について
感冒、いわゆる「かぜ」は最もよくみられる感染症の一つです。多くは軽症で自然に治りますが、症状の経過や治療の考え方を正しく理解しておくことが大切です。本コラムでは、感冒の基本から、咳が長引く場合の対応、インフルエンザ・新型コロナとの違いまで、分かりやすく解説します。
1.感冒の基本的な症状と経過
かぜの原因は ウイルス で、ライノウイルス・コロナウイルス・アデノウイルスなど数百種類以上が存在します。
典型的な症状な症状としては、
のどの痛み、鼻水・鼻づまり、咳、くしゃみ、微熱(37〜38℃程度)、全身のだるさ などです。
症状は通常、
1~2日でのどの痛み → 鼻症状 → 咳へと移行 し、7〜10日程度で自然に軽快 します。
高熱が続く、息苦しい、強い倦怠感がある場合は、単なる感冒ではない可能性があります。
特に高齢者では2次感染として肺炎がしばしば疑われますので必ず医療機関を受診してください。
2.治療方法 ー 抗生剤(抗菌薬)は効きません
かぜの原因はウイルスのため、抗生剤(抗菌薬)は効果がありません。
むしろ、抗生剤を不必要に使うと下痢・湿疹などの副作用、腸内細菌叢の乱れ、将来の薬が効きにくくなる「耐性菌」発生といったデメリットが起こります。
治療の基本は対症療法
症状を軽くして身体が治るのを助ける治療が中心です。
• のどの痛み:鎮痛薬、トローチ、うがい
• 咳:咳止め、去痰薬、気管支拡張薬
• 発熱:アセトアミノフェンなど解熱鎮痛薬
• 十分な水分と睡眠
鼻水に対して、しばしば抗ヒスタミン薬(アレルギー性鼻炎に有効)が処方されますが私の経験だとウィルスによる炎症性鼻水はあまりこの薬で効果は感じられません。のどの痛みに対する鎮痛薬(抗炎症薬)が処方されていれば改善すると思われます。
「早く治す薬」は実質的に存在せず、体の免疫が治すのをサポートする形になります。治療あくまでも対症療法です。
3.咳の後遺症(咳が長引く場合)への対応
かぜが治ったあとも 咳だけが数週間残る ことがあります。
これは ウイルス感染後咳嗽と呼ばれ、多くの方にみられます。
原因としては、気道の粘膜が過敏になっている、湿度や温度差の刺激、以前から軽度の喘息傾向がある場合は悪化しやすいです。
■ 対応方法
•咳止め薬、去痰薬、場合によっては気管支拡張薬(喘息傾向がある場合)
*吸入ステロイド薬を処方されることがあります。私も以前は処方していたことはありますが、呼吸音で喘鳴(ヒーヒーする音)が聞かれない場合にはあまり効果はありません。逆に吸入薬により喉が刺激されて声がでにくい、咳が悪化するなどの症状がでることがあり要注意です。
咳の後遺症の多くは 2〜6週間で改善 します。咳が8週間以上続く場合は、アレルギー性咳嗽、咳喘息、副鼻腔炎、胃食道逆流症など別の病気の可能性があるため、医療機関で検査が必要です。
4.インフルエンザとの違い
インフルエンザでは急な高熱(38〜40℃)、
全身症状についてはインフルよりも強い頭痛・筋肉痛・倦怠感が軽い
治療は感冒が対症療法であるのに対して、インフルでは抗インフルエンザ薬が有効(発症後48時間以内)
インフルエンザは「急激に悪くなる」「全身が痛い」という特徴があり、感冒とは違って明確な治療薬があります。
5.新型コロナ感染症との違い
最近の新型コロナ株では症状が軽く、かぜとの区別が難しい場合があります。
発熱はコロナでは微熱〜高熱まで幅が広く、これも感冒との鑑別が難しいです。
のどの痛みはコロナでは非常に強い痛みが特徴の場合あり(ない人も多い)。
コロナでは嗅覚・味覚障害が起こることあり。
いずれにしても鑑別は抗原検査がよいでしょう。しかし、現状ではコロナも感冒も治療はほぼ同じです。高齢者で体力が弱っている人については少し高価な薬ですが抗ウィルス薬があります。
まとめ
・かぜはウィルスが原因
・抗生剤は効かない
・咳が残るのはよくある
・インフルは高熱で急激
.受診の目安
高熱が3日以上、息苦しい、咳で眠れない、乳幼児・高齢者でぐったりなどは受診。
*インフルエンザの検査キットは発症24時間以降でないと偽陰性(陽性でも検査で陰性がでることがある)ので発症初期は解熱剤で対応し、なるべく発熱24時間以降に検査を行ってください。現在は自己診断キットが薬局で購入できます。

