医療・医学なんでもコラム

副院長が日々診療に携わる専門家としての知見から、医療や医学について様々なテーマで語ります。現状の医療と医学の実情がわかるコラムです。

コラムNo.9 健診で何がわかるか? その1 身体所見・血液検査

今回は皆様になじみの深い「健診」についてお話しします。「健診」とは健康診断の略で個人の健康の状態を調べるため診察したり検査したりする診療で、定期的に地域診療所や会社、学校などで実施されています。「検診」という言葉がありますが「検」の字が異なります。こちらの検診は健診で異常が出た場合の2次検査や癌検診などの特定な疾患の検査・診察を意味します。公的な健診には1)成人等健診(2)国保特定健診(3)後期高齢者健診 があります。日本で健診が根付いたのは昔流行した結核予防が元になっています。進行すると大流行になりますので定期的に問診や胸部X線を撮ることで早期発見を目指し、流行を阻止する役割を果たしました。それでは結核がほとんど無くなった現代で健診はどんな意味があるのでしょうか? 現在、健診のメニューに含まれているのが問診・医師の診察、血圧・身体測定、血液検査、尿検査、心電図、X線検査です(年齢により出来ない検査もあります)。それぞれの検査についてその役割を見ていきましょう。

問診・身体所見:眼瞼所見から貧血や黄疸がないかどうか、胸部聴診で肺や心臓の状態、腹部診察で腫瘤や動脈瘤などがわかることもあります。足のむくみや皮膚の異常も何らかの病気を示す可能性があります。

血圧・身体測定:日本でも多くの患者が持つ高血圧症は健診で発見される確率が大変高いです。高血圧は放っておくと心筋梗塞や脳梗塞・脳出血などの将来の心血管病変の元になります。基準値を超え、医療機関受診の判定がついたら必ず行くようにしましょう。

10年前からメタボ健診の名のもとに腹囲を測定するようになりました。大きなお腹は内臓脂肪が沢山蓄積していてそれが動脈硬化の原因になり種々の心血管病変を起こすというデータのもとに健診に取り入れられたのです。「メタボ」とはmetabolic syndromeの略語で、日本語では「内臓脂肪症候群」といいます。いつしかメタボが流行語となりメタボ=お腹の大きなおじさん、みたいな意味にすり替わってしまいましたが腹囲が大きいだけではメタボとは言えません。これに高血圧や以下に示す血液検査で脂質異常、血糖値の異常などを組み合わせることで診断します。メタボが健診に導引されたのは、日本が食生活の欧米化に伴い内臓肥満者が増加し、心血管病が増加することを予防するねらいがあります。太っていることが悪いというよりは、あくまでも脂質異常、高血圧、高血糖が悪いのですが、これらは肥満の改善(dietや運動による減量)によって是正できる可能性がありますよ、というのがこの健診の意義です。現在、医療機関ではメタボに対して特定保健指導といって、生活習慣の改善を促すプログラムを受けてもらうサポートも行っています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html

血液検査:大ざっぱに言うと貧血、肝機能障害、腎機能障害、糖尿病、脂質異常の診断ができます。いずれの疾患も進行しないと症状が出てこないので年に1回受診していれば早期発見の可能性が高まるでしょう。貧血については、健診だけで原因がわからなければ2次検査が必要になります。その他の疾患は血液検査所見で診断が可能なので早期の治療介入ができることになります。中でも私が最も重要と考えているのが糖尿病です。進行すると様々な合併症で生活の質(QOL)が大きく低下する疾患ですが、医療の介入で合併症の阻止が十分可能です。糖尿病に高度の腎障害を合併して透析治療を行っている患者さんの多くが、早期にきちんと血糖管理を行わなかったことに後悔しています。定期健診は糖尿病の発症を知る最も重要な機会として利用してください。健診は一般に生活習慣病を見つけることにたけていますが、これは将来のリスクに備えるものですので特に若い方は少しの異常にも注視してもらいたいと思います。高齢者については検査内容によっては異常値が出ても放っておいて良いものもあります。医療機関を受診して経過観察でよいのか治療を受けた方がよいのか相談してください。

尿検査:尿中の蛋白、糖、潜血を定性的に測定しています。尿蛋白は腎障害の指標となり1+以上では腎障害が疑われます。血液データには表れない早期の腎障害を見つけるのに有効ですが、いわゆる腎後性の障害(尿管結石や膀胱炎、尿道炎など)に伴う蛋白陽性もありますので症状も考慮して間隔をおき再検査をお薦めします。尿糖は糖尿病で検出されますが、血液データの方が診断的には優れています。すでに診断された方の経過観察には有効です。潜血反応は腎臓以下の尿路系の感染や結石、悪性腫瘍などで上昇します。臨床所見に乏しい場合には定期的に再検査して異常が出るようなら悪性腫瘍の精査が必要です。

次回のコラムは「健診でなにがわかるか? その2 心電図・胸部X線検査について」 です。

コラムNo.8 狭心症はどのように診断するのか(その2) -安易な心臓カテーテル検査やステント治療に注意-

前回のコラムからだいぶ日数が経ってしまいましたが、続きをお話します。今回の話題は冠動脈CT検査です。冠動脈は心臓に栄養を送る大事な血管でその血管が閉塞すると心筋梗塞が起こり、死に至ることがあります。最近では急性心筋梗塞になると数時間以内に緊急カテーテル治療が行われ、血管の閉塞を解除し、ステントを入れることで心筋への血液が再灌流されます。再灌流することで治療しない場合と比べて心筋梗塞の範囲が著しく縮小することが知られています。そもそも心筋梗塞になりうる冠動脈にはもともと病変があることが知られています。冠動脈のプラークと言われるものです。前回説明した負荷心筋シンチは心筋虚血状態を見つける検査でした。もちろんその検査により、すぐに治療すべき患者を見つけることが出来ますが、5年先の将来危ない血管があるかどうかの判断はできません。冠動脈CTはすぐに危険な狭窄があるかどうかの判断に加え、将来心筋梗塞になるリスクについてもある程度予想し、予防的な治療を考慮することができます。具体的には脂質の豊富なプラークの存在です。CTで真っ白に見える石灰化プラークは動脈硬化のなれの果てで、強い狭窄を作っていない限りは心筋梗塞にはなりにくいとされています。ところが脂質に富んだプラークは破れやすく、破れると中から様々な炎症物質や脂質、血栓が血管を塞いで急性心筋梗塞になります。CTは現在、かなり高速で撮影が可能になり造影剤も少なく良質な画像を得ることができるようになりました。その結果プラークの質の評価が可能になったのです。いわゆる脂質に富んだプラークはCT値と言われる見た目の濃度が低くなり、黒っぽい色になります。石灰化とは対照的です。その容量が多ければ多いほど危険といえるでしょう。狭窄も強く、脂質に富んだプラークであれば危険信号といって良いと思います。前回説明した心筋虚血が出るほどの狭窄があれば近いうちに血行再建(ステント治療やバイパス手術)、狭窄が軽ければ薬物治療が勧められます。冠動脈危険因子とされる高血圧、糖尿病、脂質異常症があればその治療が優先されます。最近では特に脂質プラークがあり、狭心症で治療後の人には2次再発予防として悪玉コレステロール(LDL)を70未満にすることが望ましいとされています。この治療によりプラークが破綻しにくくなることが知られています。このように治療に結びつく検査所見が得られるのがCTの利点です。但しCTには弱点もあります。直ちに血行再建術(ステントなど)の適応になる冠動脈狭窄と虚血の判断が正確にできないことです。一般的にCTの方がカテーテルより狭窄が強く見えるために、その所見から引き続きカテーテルを行ってステントを入れてしまうという過剰診療が繰り返し行われているのが現状です。特に石灰化を伴う病変は狭窄を評価することが困難なことがあります。厚労省は医療費のかかるステント治療を適切に行ってもらうために事前に負荷心筋シンチなどで虚血を評価したり、カテーテル中に負荷試験で得られるFFRにより虚血を判断したりしてからステントを入れるように勧告を出していますがなかなか徹底されていないようです。適応のないステント治療は医療費がかかるだけでなくその後再狭窄や再閉塞のリスクを伴う他、ステント内血栓を予防するための抗血栓療法を行わなければならず出血合併症などのリスクも伴います。この治療を行うと言われた場合には代わる治療がないことを確認してから同意するようにしましょう。当院では前回も申し上げた通り、CTを先に実施した場合、治療を要する有意な狭窄が疑われた場合には負荷シンチや負荷PET検査を実施し、適応を定めてから他院でカテーテル検査をお薦めすることにしております。

次回は「健診で何がわかるか?」についてお伝えします。

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