医療・医学なんでもコラム

院長が日々診療に携わる専門家としての知見から、医療や医学について様々なテーマで語ります。現状の医療と医学の実情がわかるコラムです。

コラムNo.18 医者に行く前に診てほしい 患者のためのChat GPT活用術

No3. 健診で異常を指摘 脂質代謝異常編

健診で異常を指摘された場合、いくつかの判定の結果、医療機関への受診を勧められる場合があります。この場合にはなるべく早く受診することをお勧めします。ただ、その前に異常の内容をあらかじめChatに尋ねて、基礎知識を得ておくと医師との会話がスムーズになると思います。また、Chatの回答と医師の説明が大きくずれている場合には素直に医師に従うことなくいろいろと質問してみると良いと思います。特に生活習慣病では薬を始めるか生活習慣の改善から始めるかはポイントとなると思います。データの異常がどの程度かにもよると思うので予習した上で医師と相談するとよいと思いますがその際にChatの活用が大変有用だと思います。例を挙げます。

質問1 55歳女性、健診で悪玉コレステロール(LDL)が155と診断された。医師と相談するようにいわれた。

Chatの回答: 健診でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が155 mg/dLという結果ですね。
この値は日本動脈硬化学会の基準では**「高LDLコレステロール血症(140 mg/dL以上)」**にあたります。


1. 危険度の見方

LDL値の意味は、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性疾患の将来リスクを反映します。
評価にはLDLの数値だけでなく、次の項目も総合的に見ます。

  • 年齢・性別
  • 喫煙習慣
  • 高血圧の有無
  • 糖尿病の有無
  • 家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞になった人がいるか
  • 中性脂肪やHDL(善玉コレステロール)の値

2. 一般的な対応方針

  • 生活習慣の改善が第一歩
    • 食事:飽和脂肪酸(肉の脂、バターなど)やトランス脂肪酸を減らし、魚・大豆製品・野菜を増やす
    • 運動:有酸素運動(速歩など)を週150分以上
    • 体重管理:BMIを22前後に近づける
    • 禁煙
  • 薬物療法(スタチンなど)
    • 他のリスク(糖尿病、高血圧、喫煙、家族歴など)がある場合は早期に検討
    • 心血管疾患既往がある場合は、より厳格な管理(LDL < 100、場合によっては < 70)

3. 次にすべきこと

  1. 健診結果を持って内科(できれば循環器内科)で相談
  2. HDLコレステロールや中性脂肪、血糖値、血圧の値も確認
  3. リスク総合評価(日本動脈硬化学会のリスクチャートなど)を受け、薬が必要か生活改善のみで様子をみるかを決定

⚠️ ポイント
LDLが140を超えている場合、他のリスクが高ければ薬の開始を勧められることがあります。
逆にリスクが低ければ、まず3か月〜半年の生活改善でどこまで下がるかを見るのが一般的です。


もしよければ、この方の他の健診項目(血圧、HDL、中性脂肪、血糖など)を教えていただければ、薬が必要かどうかの目安を具体的にお示しできます。

  このChatの結果も大変適格だと思います。55歳女性でLDLが高くなるのはよくあることで、閉経後の代謝の低下によるものですので、一般的にはすぐに薬物療法を開始することはないと思います。この回答は、よほどの他のリスクがなければ生活習慣の改善をまず試みるべきということがご理解いただける内容です。最後に「もしよければ・・」とあるので具体的な値を列記してもう一度聞いてみることにします。

質問2 はい、薬が必要かどうかの目安を教えてください。血圧は120/80前後、HDL60,中性脂肪は150、空腹時血糖値は100でした。

Chatの回答: いただいた数値をもとに、日本動脈硬化学会の「冠動脈疾患予防のための脂質異常症治療ガイドライン(2022年版)」に沿って薬物治療の目安を整理します。


1. リスク評価

  • LDLコレステロール:155 mg/dL(高LDLコレステロール血症)
  • 血圧:120/80 mmHg(正常)
  • HDLコレステロール:60 mg/dL(良好)
  • 中性脂肪:150 mg/dL(境界域高値)
  • 空腹時血糖値:100 mg/dL(正常上限)
  • 糖尿病・高血圧・喫煙歴・心血管疾患の既往:記載なし(ここではないと仮定)

これらを総合すると、動脈硬化リスクは低〜中等度と考えられます。


2. ガイドラインの薬物開始目安

リスクが低〜中等度の方では、

  • LDLが 160 mg/dL以上 → 薬物療法を検討
  • LDLが 140〜159 mg/dL → まず生活習慣改善(3〜6か月)、改善しない場合に薬物療法を検討

今回のLDL 155は 生活改善優先ゾーン に入ります。


3. 推奨される対応

  1. 3〜6か月間の生活習慣改善
    1. 飽和脂肪酸(肉の脂、バター、チーズなど)やトランス脂肪酸を減らす
    1. 魚・大豆製品・野菜・海藻類を増やす
    1. 有酸素運動(速歩30分、週5回)
    1. 体重を適正化(BMI 22前後)
    1. アルコールを控える(特に中性脂肪高めの場合)
  2. 再測定
    1. 3〜6か月後に再度LDLを測定
    1. 140未満に下がれば生活習慣を継続
    1. 改善しなければ薬物療法(スタチンなど)を検討

4. 例外的に薬を早く始めるケース

  • 家族に50歳未満で心筋梗塞・脳梗塞になった方がいる(家族性高コレステロール血症疑い)
  • 既に動脈硬化の所見がある(頸動脈エコーやCTでプラークが見つかったなど)
  • 糖尿病や慢性腎臓病を合併

まとめ
現時点では薬をすぐに始める必要は低く、まず生活改善での経過観察が推奨されます。
ただし、家族歴や動脈硬化の有無で方針が変わるため、医師とリスク評価を行うことが大切です。

回答は予想通りでした。Chatはよく勉強や経験豊富な医師と同等の回答を導き出しています。まずはChatに相談が有用です。

コラムNo.17 医者に行く前に診てほしい 患者のためのChat GPT活用術

No2. 腹部症状編

今回は腹部症状に関するChatGPT活用についてのお話しです。まず例題からお示しします。

質問1. 昨日からおなかが痛くて困っています。診療所を受診した方がよいでしょうか?

GPTの回答: 以下のようにかなり丁寧に答えてくれます。

おなかの痛みは原因や重症度が幅広く、軽い胃腸炎から緊急治療が必要な病気まで様々です。。受診を急いだほうがよいかどうかは、痛みの特徴や伴う症状によって判断します。


すぐに受診(救急を含む)が必要なサイン

  • 急に強い痛みが出てきた、またはどんどん強くなっている
  • 発熱(特に38℃以上)を伴う
  • 吐き気や嘔吐が続く
  • 血便や黒色便が出ている
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)がある
  • 意識がもうろうとする、冷や汗が出る
  • 下腹部の激痛で歩けない、立てない

こうした症状があれば今すぐ医療機関を受診してください。


昨日からの腹痛で、症状が軽くても受診をおすすめする場合

  • 痛みが1日以上続いている
  • 食欲がない、体調が悪化してきている
  • 排便や排ガスが全くない
  • 腹部が張って苦しい
  • 過去に消化器疾患(潰瘍、胆石、憩室炎など)の既往がある

受診までの注意点

  • 水分は少しずつ摂る(脱水防止)
  • 食事は脂っこいものや刺激物を避け、消化の良いものに
  • 解熱鎮痛薬や市販胃腸薬は、症状や病気によって悪化させる場合があるため、自己判断で使いすぎない

もし差し支えなければ、痛みの場所(右上腹部・左下腹部など)、性質(刺すような、鈍い、周期的など)、発熱や下痢・便秘の有無を教えていただければ、もう少し具体的に受診の緊急度を判断できます。

というように医師のアドバイスとほぼ同じ対応をしてきます。しかし、最初からもう少し症状をしぼって聞いてみると良いでしょう。痛みの性状、場所、発熱、下痢、便秘の有無は診断に大変重要です。そこで下記のように最初から絞り込んで質問すると良いでしょう。

質問2.上腹部の痛みが今朝から出現しました。食べると症状が軽くなり、空腹で痛くなります。食欲は軽度低下していますが、下痢や便秘はありません。発熱はありません。嘔吐もありません。医療機関を受診した方が良いでしょうか?

ChatGPTの回答

お話の症状(空腹時に痛みが出て、食後に軽くなる上腹部痛)は、
典型的には胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍でみられるパターンです。


受診をおすすめする理由

  • 消化性潰瘍は進行すると出血(吐血・黒色便)や穿孔(胃や腸に穴が開く)を起こすことがあります。
  • 早めに診断し、胃カメラやピロリ菌検査、必要に応じて胃酸抑制薬の内服を始めることで、症状の改善と再発予防が可能です。
  • 市販の胃薬で一時的に症状が軽くなることもありますが、根本的な原因(ピロリ菌感染や薬の副作用など)を特定しないと再発します。

受診の緊急度

  • 現時点では発熱や嘔吐、吐血、黒色便などの重症サインがないため、救急外来を受ける必要は低いと思われます。
  • ただし、1週間以内を目安に内科または消化器内科を受診して原因を調べることをおすすめします。

受診までに気をつけること

  • 空腹時間を長くしすぎない(少量の消化のよい食事を複数回に分ける)
  • 刺激物(コーヒー、アルコール、唐辛子など)や脂っこい食事を避ける
  • NSAIDs(ロキソニン、イブプロフェンなどの鎮痛薬)を自己判断で飲まない
    ※胃潰瘍を悪化させる可能性あり
  • 水分はしっかり摂る

このように症状を詳しく絞り込んで説明するとかなり具体的な対応を答えてくれます。自分がどんな病気に陥っているのか、または病気ではないのか、などをChatが教えてくれます。

自覚症状はそれほどではないが局所の痛みが目立つ場合の質問です。

質問3. 昨日から右下腹部がきりきり痛む感じがします。普通に生活はできますが気になります。痛む場所を少し強く推すと痛みが増強します。

Chatの回答

右下腹部の「きりきり痛む」症状は、いくつかの病気でみられますが、虫垂炎(盲腸)や、女性の場合は卵巣の病気(卵巣嚢腫のねじれなど)も重要な鑑別になります。

注意が必要な理由

  • 虫垂炎は初期は軽度の痛みでも、時間とともに悪化し、発熱や吐き気、強い圧痛が出てきます。
  • 右下腹部を押して離したときにより痛みが強くなる(反跳痛)がある場合や、歩行で響く場合は要注意です。
  • 卵巣や卵管の病気も、急な腹痛の原因になります(女性の場合)。

今の時点での対応

  • 普通に生活できる程度でも、症状が昨日から持続しているため、早めの受診(できれば本日中)をおすすめします。
  • 自宅で様子をみてよいのは、痛みが軽く、悪化傾向がなく、発熱・吐き気・下痢・便秘・血便が全くない場合のみですが、それでも診断確定には診察が必要です。

すぐ受診すべきサイン

  • 痛みの悪化
  • 発熱(37.5℃以上)
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢や便秘の悪化
  • お腹が固く張る
  • 歩行や咳で響く痛み

まとめ
症状の経過と部位から虫垂炎の可能性もあるため、救急外来または本日中の医療機関受診を強く勧めます。

以上がChatの回答でした。大変適格です。

診療所を受診すればさらに、腹部の触診や聴診を行います。虫垂炎や胆石発作、婦人科的炎症疾患などの腹部炎症性疾患では触診で重症度が判定できます。さらに血液検査で炎症反応を確認すれば手術可能な病院へ紹介するかどうかの確信を得られます。いずれにしても「おなかの痛み」があったら、具体的な症状をChatに入れて尋ねてみることが有用です。

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