医療・医学なんでもコラム

院長が日々診療に携わる専門家としての知見から、医療や医学について様々なテーマで語ります。現状の医療と医学の実情がわかるコラムです。

コラム28 あまり知られていない花粉症の話

  1. 花粉症とは

花粉症は、植物の花粉を抗原とする
アレルギー性鼻炎 の一型です。日本では主に スギ(2–3月)、ヒノキ(3–4月)、イネ科(初夏)、ブタクサ(秋)が原因となります。

症状はくしゃみ、水様性鼻汁、鼻閉、眼のかゆみ が典型です。

花粉症の一般的なお話しはインターネット上で詳しく出ているのでそちらをお読みください。

わかりやすく書いてあるサイトをご紹介します。

花粉症のはなし ~原因とメカニズム~|アレジオン【エスエス製薬】

  • 診断について

症状に季節性があることが診断に重要で、スギであれば2-4月、ヒノキであれば4-5月に症状が限定されればかなりの確率で特定できます。鼻内の蒼白腫脹の所見もアレルギー性鼻炎を示唆するものです。血清特異的IgEは血液で簡単にアレルギーがあるかどうかを調べる簡易的な方法で内科でもよく行われています。これでスギが陽性ならスギ花粉症であることが判明します。但し陰性でも、季節性の鼻炎がはっきりしていて、抗アレルギー薬が効けばスギ花粉症の可能性は残ります。IgE値の感度は100%ではないのです。ここで得られた特異的IgEの値は症状の重症度とは異なりますので注意が必要です。

  • なぜ患者が増えているのか? 東京と隣県との違い

都内の花粉症保有者は10年前の統計ですが、その30年前と比較して4-5倍に増加し、10-20代では約60%の人が花粉症と言われています。

考えられている要因

  • 大気汚染説

スギ人工林の増加、都市部の大気汚染、衛生仮説(微生物曝露減少)、生活様式の変化などが考えられています。特にディーゼル排気微粒子はアレルギー反応を増強すると報告されています。東京都は千葉県より単位面積当たりのスギの本数が少ないのに花粉症人口は多いこともこの仮説が有力であることを示しています。

東京都では多摩地域を中心に花粉の少ないスギの木に植え替える事業が進行中とのことですが、併せて環境保全も重要ということですね。

  • 衛生仮説

幼少期の清潔志向により免疫制御系のTh2活性が高まり、IgE抗体の産生が促される結果、ヒスタミンなどのアレルギー物質を産生する肥満細胞が活性化され、花粉症を引き起こすと言われています。最近は新型コロナ感染やインフルエンザの予防のためより清潔志向が高まっていますが、子供たちの将来が心配ですね。

5.治療

薬物療法

第2世代抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド、ロイコトリエン受容体拮抗薬。飛散前から開始することでピーク症状を抑制できます。

抗ヒスタミン薬は薬局で購入することもできます。

重症例では併用療法が有効ですが、医療機関と相談してください。

また、重症例で注射薬があります。抗IgE抗体薬であるオマリズマブ(ゾレアⓇ)という薬です。

この薬を2-4週間に1回注射します。この注射は誰でも使えるわけではないので希望者は医療機関と相談してください。ゾレアについて | 花粉症の注射

舌下免疫療法

抗原に少量ずつ曝露し、免疫寛容を誘導します。

原因抗原に対する根治的治療に近い方法です。本治療法は私が最も推奨するものです。当院でも7年前から始めており、多くの花粉症患者さんの治療を実施しております。特に小学生以上のお子さんは将来がありますのでこの治療をいち早く始めることをお勧めします。本治療を開始すると次の花粉時期にはかなり症状が緩和され、年々その効果は大きくなっています。約半数の方は抗アレルギー薬が2年目以降には不要になっております。治療は5年続けると終了となり、効果は持続します。治療を希望される方は、本治療を行っている医療機関が公開されていますので近隣の医療機関を探して受診されてください。トップ |

なお、花粉症の治療開始時期は花粉の時期が終了した6月以降、12月ころまでとなります。

詳しくは下記サイトをご参照ください。舌下免疫療法とは|舌の下(したのした)で行う鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト

コラム27 胃腸炎の話 ― ウイルス性胃腸炎と食中毒の違いについて

皆様は暑い時期に食中毒など胃腸炎症状に苦しむという印象があるかと思いますが、実は胃腸炎は冬が多いのです。当院でも12月ころから胃腸炎で受診する患者さんが増加しています。胃腸炎とは腹痛、嘔吐や下痢などの症状で時に脱水症状を起こして体調が不良になる病気です。患者さんに「何か思い当たるような生ものなどの食材をたべましたか?」と尋ねると「2日前に刺身をたべました。」、「2日前に賞味期限をすぎた総菜をたべました」、「2日前に生牡蠣をたべました。」など様々な回答があります。胃腸炎には大きく分けてウイルス性胃腸炎と食中毒がありますが、それを見分けるポイントについて解説いたします。

 これらは似ているようで「原因・広がり方・対策」が全く違います。

原因の違い

ウイルス性胃腸炎食中毒
主な原因ウイルス細菌・毒素
代表例ノロ、ロタカンピロバクター、サルモネラ、黄色ブドウ球菌
感染源人 → 人食品

ウイルス性胃腸炎=「人から人」感染
 食中毒=「食べたもの」から直接胃腸を障害

発症までの時間

ウイルス性胃腸炎

  • 1~2日後に発症することが多い。
  • 「昨日生ものや半生ものを食べたから?」→ 実は関係ないことが多い

食中毒

  • 数時間~半日以内に発症することが多い(黄色ブドウ球菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ菌など)。生の鶏肉でよくあるカンピロバクターで2-5日後の発症が有名です。
  • 「同じものを食べた人が同時に症状」が典型

症状の特徴の違い

ウイルス性胃腸炎

  • 嘔吐・下痢が中心で、発熱は軽度~中等度。腹痛は比較的軽いのが特徴。
  • 家族内で次々に発症する。

食中毒

  • 強い腹痛があり、下痢が主体(血便のことも)で発熱が高いことあり。
  • 一緒に食べた人が同時に発症するのが特徴。

広がり方

ウイルス性胃腸炎

  • トイレ・ドアノブ・手指から拡散し、吐物・便の処理で感染拡大。家庭内・施設内で流行

食中毒

  • 原因食品を食べた人のみで、人から人へは基本的に広がらない

治療の違い

共通点

  • 治療の基本は脱水予防と症状対症療法。整腸剤がしばしば処方される。脱水で水分補給ができない場合には診療所などで点滴の治療が必要。下痢を止めるような止痢剤(ロペラミドなど)と言われる薬は禁忌。ウィルスや細菌が排泄するのを妨げてしまうため。

抗生物質

  • ウイルス性胃腸炎:使わない
  • 食中毒:原則使わない(例外あり)

抗生物質はほとんどのケースで不要

受診すべき危険サイン(重要)

以下があれば受診を勧めます。診療所で点滴による脱水の治療が必要です。

  • 水分がほとんど取れない
  • 半日以上尿が出ない
  • 高熱が続く
  • 血便
  • 高齢者・乳幼児
  • 基礎疾患がある方

*生牡蠣によるノロウィルス感染について

なぜ牡蠣でノロウイルスが多いのか

牡蠣は海水中の微生物を取り込む「ろ過摂食」を行うため、下水などに含まれるノロウイルスを体内に濃縮しやすいという特徴があります。見た目や匂いでは判断できない、新鮮な牡蠣でもウイルスは存在し得る、冬場はノロウイルス自体の流行期などの条件が重なり、
冬の牡蠣=ノロウイルス感染のリスク となりやすいのです。冬の時期にはなるべく生牡蠣は食べない方がよいでしょう。十分に火と通すか煮るかして食してください。

余談ですが、牡蠣を食べてノロウイルスに感染した場合、医学的には「ウイルス性腸炎」、公衆衛生的には「食中毒(ウイルス性食中毒)」の両方に該当します。

この理由は、病気の正体 が ノロウイルス感染でありながら、感染のきっかけ が食品(牡蠣)だからです。そのため、医療現場では「急性ウイルス性胃腸炎」、保健所や行政では「ノロウイルス食中毒」というように、使われる言葉が変わるのです。我々医療従事者はウィルス性腸炎としての治療や予防策(同居人への伝染予防)を行います。

診療時間

診療カレンダー

  • 内科(百瀬せつ子、百瀬満)
  • 循環器内科(百瀬満)
  • 小児科 乳幼児健診(百瀬せつ子)

当院は予約制です。

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TEL 03-5311-3456

区民健診は随時受け付けます。現在、杉並区、練馬区民の健診が可能です。

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東京都杉並区清水2-5-5
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荻窪駅北口より下井草駅行きバス停「清水1丁目」下車、徒歩3分

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