医療・医学なんでもコラム

院長が日々診療に携わる専門家としての知見から、医療や医学について様々なテーマで語ります。現状の医療と医学の実情がわかるコラムです。

コラム26 感冒(かぜ)について詳しく知ろう

感冒(かぜ)について

感冒、いわゆる「かぜ」は最もよくみられる感染症の一つです。多くは軽症で自然に治りますが、症状の経過や治療の考え方を正しく理解しておくことが大切です。本コラムでは、感冒の基本から、咳が長引く場合の対応、インフルエンザ・新型コロナとの違いまで、分かりやすく解説します。

1.感冒の基本的な症状と経過

かぜの原因は ウイルス で、ライノウイルス・コロナウイルス・アデノウイルスなど数百種類以上が存在します。

典型的な症状な症状としては、

のどの痛み、鼻水・鼻づまり、咳、くしゃみ、微熱(37〜38℃程度)、全身のだるさ などです。

症状は通常、

1~2日でのどの痛み → 鼻症状 → 咳へと移行 し、7〜10日程度で自然に軽快 します。

高熱が続く、息苦しい、強い倦怠感がある場合は、単なる感冒ではない可能性があります。

特に高齢者では2次感染として肺炎がしばしば疑われますので必ず医療機関を受診してください。

2.治療方法 ー 抗生剤(抗菌薬)は効きません

かぜの原因はウイルスのため、抗生剤(抗菌薬)は効果がありません。

むしろ、抗生剤を不必要に使うと下痢・湿疹などの副作用、腸内細菌叢の乱れ、将来の薬が効きにくくなる「耐性菌」発生といったデメリットが起こります。

治療の基本は対症療法

症状を軽くして身体が治るのを助ける治療が中心です。

•             のどの痛み:鎮痛薬、トローチ、うがい

•             咳:咳止め、去痰薬、気管支拡張薬

•             発熱:アセトアミノフェンなど解熱鎮痛薬

•             十分な水分と睡眠

鼻水に対して、しばしば抗ヒスタミン薬(アレルギー性鼻炎に有効)が処方されますが私の経験だとウィルスによる炎症性鼻水はあまりこの薬で効果は感じられません。のどの痛みに対する鎮痛薬(抗炎症薬)が処方されていれば改善すると思われます。

「早く治す薬」は実質的に存在せず、体の免疫が治すのをサポートする形になります。治療あくまでも対症療法です。

3.咳の後遺症(咳が長引く場合)への対応

かぜが治ったあとも 咳だけが数週間残る ことがあります。

これは ウイルス感染後咳嗽と呼ばれ、多くの方にみられます。

原因としては、気道の粘膜が過敏になっている、湿度や温度差の刺激、以前から軽度の喘息傾向がある場合は悪化しやすいです。

■ 対応方法

•咳止め薬、去痰薬、場合によっては気管支拡張薬(喘息傾向がある場合)

*吸入ステロイド薬を処方されることがあります。私も以前は処方していたことはありますが、呼吸音で喘鳴(ヒーヒーする音)が聞かれない場合にはあまり効果はありません。逆に吸入薬により喉が刺激されて声がでにくい、咳が悪化するなどの症状がでることがあり要注意です。

咳の後遺症の多くは 2〜6週間で改善 します。咳が8週間以上続く場合は、アレルギー性咳嗽、咳喘息、副鼻腔炎、胃食道逆流症など別の病気の可能性があるため、医療機関で検査が必要です。

4.インフルエンザとの違い

インフルエンザでは急な高熱(38〜40℃)、

全身症状についてはインフルよりも強い頭痛・筋肉痛・倦怠感が軽い   

治療は感冒が対症療法であるのに対して、インフルでは抗インフルエンザ薬が有効(発症後48時間以内)

インフルエンザは「急激に悪くなる」「全身が痛い」という特徴があり、感冒とは違って明確な治療薬があります。

5.新型コロナ感染症との違い

最近の新型コロナ株では症状が軽く、かぜとの区別が難しい場合があります。

発熱はコロナでは微熱〜高熱まで幅が広く、これも感冒との鑑別が難しいです。

のどの痛みはコロナでは非常に強い痛みが特徴の場合あり(ない人も多い)。

コロナでは嗅覚・味覚障害が起こることあり。

いずれにしても鑑別は抗原検査がよいでしょう。しかし、現状ではコロナも感冒も治療はほぼ同じです。高齢者で体力が弱っている人については少し高価な薬ですが抗ウィルス薬があります。

まとめ

・かぜはウィルスが原因

・抗生剤は効かない

・咳が残るのはよくある

・インフルは高熱で急激

.受診の目安

高熱が3日以上、息苦しい、咳で眠れない、乳幼児・高齢者でぐったりなどは受診。

*インフルエンザの検査キットは発症24時間以降でないと偽陰性(陽性でも検査で陰性がでることがある)ので発症初期は解熱剤で対応し、なるべく発熱24時間以降に検査を行ってください。現在は自己診断キットが薬局で購入できます。

コラム25 現在の医療事情とこれからの医療への向き合い方 No.2 今後の対策

  • 保険医療内容見直しによる医療費削減の検討

現在の高市政権は維新と連立の形をとりました。その維新の猪瀬議員は以前から医療費削減についての提案を国会に提出しています。その主な内容は、保険診療で扱っている医薬品の一部をOTC(薬局で自費で購入できる市販薬)として扱い、保険がきかなくなるようにする、というものです。ターゲットに挙げられているのが湿布薬です。現在一回の外来診療で出せる湿布薬は以前よりは制限されていますがまだ63枚まで処方できます。これをOTC扱いにしようというものです。また、保険診療でもOTCでも販売されている共通の薬は保険からはずすというのも提案されており、これは主に花粉の時期に大量に出回るアレルギーの薬が含まれます。その他、風邪などありふれた病気に対してセルフメディケーションをより普及させるというシステムも導入しようとしています。これにより診療所通院を減らす効果があります。米国ではよくあることですが、診断までは医療機関で行い、その後の薬は薬局で購入して自費で対応してもらうという方法です。医師はOTC薬を記入した紙を患者に渡し、「これを薬局で購入して服用するように」と提案します。薬局では薬剤師がいるので関連する薬の提案もできるでしょう。患者さんとしては処方箋を出しに薬局に行くのではなく、OTCカウンターにもっていくというイメージです。もちろん薬代はやや高額にはなるかもしれません。このようになれば自然とかぜくらいで医療機関を受診する人は減ってくるかもしれません。現在もインフルエンザやコロナ感染の抗原検査が薬局で購入できますので、外来診療の一部をセルフメディケーションが担っているとも言えます。

  • 医療内容の適正化による医療費削減

保険診療は月々医療機関が医療内容をすべて申告して診療報酬を得る仕組みで、不当な医療を行っている場合には診療報酬がその分削られています。しかし、現実には「やらなくてもよい医療」が行われているのも事実です。循環器領域は特に医療費が莫大に使われています。それは高額な医療材料が使われており、それが過剰な医療であっても心臓の治療という名目ですから比較的緩い適応でも査定されません。しかし、以前ステント治療は野放図に行われていましたが、最近はエビデンス重視で心筋虚血が証明されないステント治療は診療報酬が査定される傾向にあります。これはほんの一例ですが、高額医療がしばしば過剰診療に結び付く例は思いつくだけでも数多くあり、それらが適正化されればかなりの医療費削減になると思われます。

  • 適材適所の医療分散

前記の過剰な高額医療の実施は、基本的に専門家がなるべくリスクを少なくしたいという思いから行われているのですが、一方で、患者を獲得するとか病院の利益のために行われている場合も少なくありません。これは同じ医療圏内に複数の医療機関があって、それらが競争するあまり、高額医療機器を導入したり、似たような高額な医療を提供したりすることになります。これからはある程度、厚労省などが高額医療や救急医療などを適材適所に配置することも検討した方が良いでしょう。それにより無駄な医療が削られる可能性があります。病床数を減らすことも必要でしょう。現在、地方などでは赤字経営の病院が増えていますが、少子高齢化に伴い人口が特に地方で減っていることが原因となっています。高齢化は進んでいますがそれ以上に病院が多く、やがて高齢者も減少すれば経営も成り立たなくなるので自然と病院は淘汰されていくと思われます。その前に病床を強制的に削減させるのも経営的にも理にかなっています。これにより無理やり入院を延長して医療費が増えるという本末転倒な状況は回避できるのではないでしょうか。

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